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歩積両建とは?銀行の歩積両建預金は禁止 運転資金融資と優越的地位の濫用

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歩積 両建預金とは?

銀行がやってはいけないこと、その代表格が歩積・両建(預金)です。
歩積(ブヅミ)両建(リョウダテ)と読みます。

歩積(預金):銀行が融資した資金をそのまま預金に留まらせる
両建(預金):融資した資金で銀行が定期預金などを作らせる

これらは共に拘束性預金とも呼ばれ禁止されています。

具体例

歩積預金

3千万円の融資を申し込んだら→ 6千万円融資され→ 3千万円は使っても良いといわれたが→ 残りの3千万円はそのまま預金に残せといわれた。

こんなパターンが歩積預金です。

残せといわれた3千万円は、高い金利で借りたのに使うことができず安い金利の預金に拘束されている状態です。

預金とは銀行から見れば借金です。歩積預金とは、高い金利で借りた借金を安い金利で銀行に貸すようなものです。

得をするのは銀行で損をするのはもちろん顧客となります。

2018年に問題が発覚した東日本銀行の不正融資問題の場合では、主にこの歩積預金が行われていました。

その件数・金額や全店舗の6割強の支店で行われていたことから見ると、組織ぐるみの違反といえるでしょう。

両建預金

必要だから3千万円の預金を解約しようとしたら→ 解約させてもらえず→ 3千万円無理矢理融資された。

預金を解約すれば済んだのに、解約できずに、しかも融資を受けさせられ、預金より高い融資金利を払わなければならなくなった。

結果的には3千万円借金して3千万円の定期を作ったことになる。

このようなパターンが両建預金です。やはり得をするのは銀行で損をするのは顧客です。

歩積預金と両建預金は明確に区別できない場合も多いため、実際には歩積両建預金と表現されるのが通常です。

 

歩積両建預金は優越的地位の濫用になる

歩積両建預金は悪質であからさまであり、これまでこの禁を犯す銀行などまずありませんでした。

私が銀行に入社した30年前でさえ、昔はこんな悪い手口があったんだという類いのいわば都市伝説的な違反の代表例として、新入社員の研修で習った程度でした。

しかし、2018年に発覚した東日本銀行の不正融資やスルガ銀行のシェアハウス融資問題・不祥事にかかわるニュースでこの言葉を聞くことが増えました。

まさか現実にやっている銀行がいたとは、というのが正直な感想です。

逆にいえば、それほどまでに歩積両建預金とは、カネを貸してやるという強い立場を悪用して、銀行が顧客の預金を拘束する不当な行為なのです。

このように銀行が強い立場を悪用することを総称して「優越的地位の濫用」といい、厳しく禁止されている行為です。

違反が悪質なら銀行が罰せられることもあります。

銀行が罰せられるとは?

これはつまり、銀行の監督官庁である金融庁から、罰則を受けるということです。

具体的には業務改善命令や、さらに悪質な場合は業務停止命令というものもあります。

業務改善命令と業務停止命令の内容

業務改善命令

「銀行業務のこの部分がまずいから、いついつまでにどうやって改善するか計画を作れ、そしてそのとおりに改善しろ」という命令です。

下記の業務停止命令に比べれば、まだマシという位置づけです。

(ちなみに東日本銀行の業務改善命令は、同行HPからコンコルディア・フィナンシャルグループのHPに遷移すると、見ることができます)

業務停止命令

業務の全部、あるいは一部業務を一定期間停止させられるものです。最近では、スルガ銀行での不動産投資関連融資の停止がこれに該当します。

業務停止命令は文字通り銀行業務を停止する命令であり、銀行にとってはまさに死活問題です。

業務停止命令を受けると銀行の信用はガタ落ちになり、最悪の場合、信用不安や取り付け騒ぎに発展する可能性すらある非常に重い措置です。

 

歩積両建預金が運転資金の借入金と関係しやすい理由

銀行側に都合が良いという側面

歩積両建預金は処罰の対象になる禁止事項と上記しました。

実際のところ、両建預金は立証が難しくあまり問題にはなりません。融資した取引先に定期預金作成をもとめるのは、銀行ではよくあることです。

これなどまさに「ものは言いよう」で、いかにしてうまく交渉するか、ここが銀行員のスキルに左右され実績の差になる部分でもあるのです。

東日本銀行やスルガ銀行は、やり方や交渉の方法があからさま過ぎたのだと思います。

歩積預金が問題になる

ですから、むしろ問題となるのは歩積預金のほうです。
不適切融資ではなくても、例えば期末月末など、融資残高を積み上げたい銀行から
運転資金を、なかば無理矢理に押しつけられた場合などです。
運転資金は文字通り通常の企業の運転に使われる資金です。したがって資金使途・つまり融資金の使い途については柔軟なところがあります。融資を受けたあとで、なににいくら使ったかなどを、知らせる必要がありません。
こうした性格から、銀行のいわばお願い営業、に使われるのも運転資金なのです。

お願い営業で仕方なく借りた融資金は、まずもって本当なら必要ないお金です。
融資を受けたあと、口座に入金したままにしておいたらどうなるでしょう?
数日後、銀行員が血相を変えて飛んできます。そして
『お願いですから、今すぐ全額使って下さい。それが無理ならどこか他の銀行に振り込んで下さい!』と文字通り懇願してくるはずです。

歩積預金にならないようにするために

上述のとおり、歩積(預金)とは、銀行が融資した資金をそのまま預金に留まらせることです。銀行都合で仕方なく借りたものでもあっても、運転資金融資がそのまま歩積預金になってしまうと、これは銀行にとってまずいからなのです。

上記のようなケースは、そもそも銀行都合の融資ですので、この時点で銀行はすでに
『優越的地位の濫用』をしているともいえます。もちろん表向きは銀行からの依頼でお付き合い、という名目ですので優越的地位の濫用とはなりませんが・・・
だからといって融資金をそのままにしておくと、最悪の場合銀行が厳しい処罰対象になってしまうというわけです。
歩積預金をしないために、銀行では融資した運転資金を何日間のあいだに何%以上使ったか確認するように、自主的に預金の動きや残高をチェックしています。
ですから、仮に融資された運転資金が残ったままになっていたら、優越的地位を濫用したことが、完全に表に出てしまうことになるのです。

必要だから運転資金融資を受けた場合でも 歩積禁止のために同じことが起こり得る

ちなみに、本当に必要だから運転資金融資を受けた場合も、上記銀行都合のケースとまったく同じです。つまり融資を受けたあと支払はまだ先だからといって口座に残しておくことはできないのです。なぜなら、残したままだと歩積預金と見なされてしまうからです。「本当に必要だから」「ほんとうは銀行都合だが、表向きは運転資金」本当の意味はまったく違っていても、表向きは同じ運転資金です。ですから速やかな出金を求められます。支払が融資を受けた銀行の口座からの自動引き落としだったとしても、一回は他行口座に移してから、もう一度もとの口座に戻せと言われます!
つまり、融資を受けた銀行の口座から資金が無くなれば、運転資金をちゃんと使ったということになるのです。

なお設備資金では資金使途の確認が厳しく、設備の目的とした支払時期がくるまで預金にとどめておいても良いことになっており、こうした問題は発生しません。

 

銀行都合にどこまで付き合うか? 思案どころ

そして、ここがポイントなのですが、「自分の口座じゃなければ」と奥さんや子供の口座にうつす。あるいは自分名義の別の口座にうつしても、ダメです。
銀行は融資金を移すことについて、厳しく確認することが義務づけられています。
原則は自分名義の他行口座に、振り込みで資金移動する必要があります。
(こうした行為を隠語で「カネを逃がす」と銀行では呼んでいます)
お付き合いとはいえ、銀行都合でいらない融資を借りることになり、金利どころか振込の手数料まで負担させられて・・・銀行との良好な関係を続けていくために我慢していくか?ここが思案のしどころでしょう。

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