信用金庫の事業融資 運転資金借入の審査
事業資金の融資を初めて信用金庫から借りる審査 借入条件 金利 必要書類
今あなたが既に事業を行っている、または事業を始めようと思っており、信用金庫から事業資金を借りようとしているとしたら、おそらくはとても不安に感じているのではないでしょうか。
その不安はおそらく「果たして融資してもらえるのかどうか」に集結するものかと思いますが、門前払いはされないにしても自分が保有している情報が少なすぎて、てんで見当違いの質問をしてしまったり、馬鹿にされたりはしないか不安になったりもあるかと思います。
金融機関は普通に生活している分にはあまり接点がない業種です。給与振込や各種料金の引き落とし等、誰しも日常的に利用はしていますが、金融機関のスタッフと対面して交渉するという機会はほとんどないでしょう。
ですから、いざ融資を受けようと思っても、何をしていいのかどうかわからないのが当然です。
そうではあっても、あなたには融資をどうしても取りつける必要がある。そのためにまず行うことは、相手方をよく知ることです。
信用金庫がどのような仕組みで融資審査を行うのか、それをこれから見ていきましょう。「自分を知り、相手を知れば百戦危うからず」という言葉の通り、戦で勝つには相手をよく知ることが重要な要素です。
信用金庫の融資審査システムと審査の流れ
あなたが新規起業者または中小零細企業の経営者である場合、融資の相談は大手銀行より信用金庫に行なうべきです。
信用金庫はその設立目的の中に、中小企業の健全な発展(信用金庫の三つのビジョン)が掲げられており、一方で大企業は融資対象者にならないなど、事実上中小企業支援に特化した金融機関です。
自身が規模の小さい中小企業者であるため「鼻で笑われ馬鹿にされるのではないかと思っていた」と話されたお客様もいらっしゃいましたが、そもそも信用金庫は中小企業者と同じ船に乗ることを義務付けられた仲間であるため、堂々と門を叩きましょう。
中小零細企業者のあなたこそが望ましいお客様なのです。
信用金庫の審査ルートは、おおよそ以下のようになっています。
融資申込
→ ①面談した担当者での検討・稟議作成
→ ②融資担当役席の審査
→ ③営業店支店長の審査(or決裁)
→ ④本部審査部署での審査
→ ⑤理事長以下役員の承認
→ ⑥理事長の決裁
融資の相談を行うことが事実上の申込みとなりますが、まずはその担当者が融資可能かどうかの検討を行います(①)。
担当レベルで「これはとても融資できない」との判断に至れば融資は謝絶されてしまいます。
担当者が融資可能と判断した場合、次にその支店の融資担当役席(副支店長・次長)が案件を精査し、融資可否の審査をします(②)。
ですが、実際の業務では担当者が融資相談を受けた場合、すぐに融資担当役席に相談をかけるため、①と②は一体となるのが通例です。
また、この段階で融資の可否を左右する稟議はおおよそ固まってしまいますので、提示可能な情報、特にプラス材料となるもの(提供できる担保、預金などの金融資産、優良な取引先等)はすべて開示するのが重要です。後出しは印象が悪くなるのはじゃんけんだけではありません。
融資担当役席が納得した後、正式な稟議として支店長へ提出されることとなります(③)。
たいていの場合、支店長に事前の相談もなくいきなり稟議を上げることはありませんので、②と③は同時並行で進みます。ですので、融資担当役席が稟議を完成させた=支店長の審査はパスした、と考えてよいと思います。
信用金庫において融資が最終的に確定する「決裁」は、案件により決裁を下す人が変わってきます。
すべての融資の決裁者は理事長(銀行での頭取)ではありますが、ある一定の金額や条件の中であれば、支店長に決裁権が委譲されています。
理事長が直接決裁する稟議を「本部稟議」、支店長が決済するものを「支店長専決」と私たちは呼んでいます。
支店長専決で対応できる基準は信用金庫によって違いますが、一般的には1,000万円から2,000万円の間くらいだと思います。また金利と返済期間の下限上限も設定されているのが通例です。
支店長専決で対応するのであれば、融資審査は③で終了となり、融資は確定します。本部稟議となった場合は、④の本部審査部署での審査に回ることとなります。
本部の審査部署は年がら年中稟議内容を精査し、融資可否を検討していますので、①~③までの融資審査よりも厳しい目線となります。ここを超えれば融資はまず決定しますので、まさに正念場です。
明け透けに言ってしまえば、支店の担当者や融資担当役席は「本部稟議が通るか否か」を第一に考えて稟議を組み立てます。
自分が納得できる稟議内容を作り上げても、本部稟議ではじかれれば何の意味もありませんし、お客様の期待に応えることもできなくなります。
よって、融資担当役席は自分のポリシーなどかなぐり捨てて「通りやすい稟議内容」を作成することに躍起になります。また、一度本部稟議ではじかれた案件の再審査自体が稀有であり、決裁を得られる可能性は極めて低くなることから、本部稟議は1発勝負の様相を呈しています。
ここまで読まれると、前述の「提示可能なプラス情報はすべて提示しておく」の重要性がお分かりいただけると思います。
本部審査部門の審査を通過した後は理事長以下役員の承認⑤および理事長の決裁⑥へと進みますが、ここで融資不可となるケースはほとんどないといっていいでしょう。ここを通過して初めてあなたの融資は決定されます。
ここまで読まれてお気づきかと思いますが、
信用金庫における融資審査は手数が非常に多いということです。
手数が多いということは、それなりの時間が必要だということです。また、融資取引がこれまでないのであればなおさらです。
信用金庫に初めて融資の相談をする際の最大の注意点は「資金必要日から十分な時間的余裕をもって相談する」ことと言えるでしょう。
例えば「2日後に資金が欲しい」と相談しても、融資取引がない先であればほぼ不可能だと考えられるため、その場で謝絶されてしまう可能性は極めて高くなってしまいます。
融資条件と金利・利率
信用金庫に限らず、融資金利は借主の決算書の内容(財務内容)と保証・担保(保全)によって決まるのが常識です。
融資を受ける目的は理にかなっていても、その融資の額や返済額があなたの会社に対し過剰である場合や、決算書の内容がよくない場合などは、当然に借入金利は上がることとなります。
また、融資金額に対して十分な担保や保証がない場合も同様です。加えて、これまで融資取引がない場合は返済の実績がないため、金利が上がる可能性は高くなります。
融資の借入条件としては、金利のほかに担保や連帯保証人、または信用保証協会の保証などがありますが、これらを要求されるかどうかも決算書の内容によってほぼ決まってきます。またこちらも金利と同様に、取引実績がない場合は厚めに要求される傾向にあります。
※ 信用保証協会の保証付き融資とプロパー融資の違い比較
ですが、各市町村や県において、借入条件が決算内容によらず決まっている制度融資という商品があり、こちらは比較的低金利で借入ができる上に固定金利である場合が多いため、多くの中小事業者が利用しています。
また創業の場合はさらに優遇される傾向がありますので、まずは制度融資を検討すべきだと思います。
融資条件等は各市町村に問い合わせるか、資料の配布等を行なっていますので、ご自身で調べることが重要です。
また、融資相談を行う場合に「この制度融資を利用したい」と宣言しておいた方がよいでしょう。審査途中で制度融資を希望されると、審査が遅れてしまう原因となる場合があります。
必要書類
初めて信用金庫で融資を依頼したい場合、持参すべき書類はいくつかありますが、まずは以下の書類を準備しましょう。
① 決算書3期分(3期経過していない場合は経過分のみ)
決算書がなければ話が進みませんので必須です。最低3期分は審査上必要となり、また勘定科目明細も提出しましょう。
② 事業計画書(新規事業者の場合)
創業する場合、当然決算書はありませんので事業計画書を提出することになります。事業計画書の無い創業資金の申込はあり得ませんので必須となります。
内容については信用金庫のアドバイスを受け、より精度の高いものにしていくことが往々にあり、共同作業にて完成を目指すことも珍しくありませんので、必ずしも完璧なものでなくてOKです。
③ 法人の登記事項証明書、経営者の運転免許証、または健康保険証等の本人確認書類
全く取引がない場合、本人確認の必要があります。法人の登記事項証明書、代表者の免許証等の本人確認書類を持参してください。
④ 保有資産の資料
不動産や預金などの資産が確認できる資料があれば提示された方がよいでしょう。いずれ必要となります。
不動産を所有している場合は固定資産税納付通知書または市役所で発行している固定資産評価証明、金融資産の場合は定期預金証書などのコピーなどです。
⑤ 企業と自分の沿革および略歴を示したもの
融資取引を行なう上で、その企業がどのような沿革により現在があるのか、また代表者がどのような人物であるのかは重要な要素です。
書式としては一般的な履歴書で十分ですので、提出しておくとその後の確認事項が減り、審査スピードが上がります。
⑥ 許認可に関する書類
許認可が必要な業種の場合に必須となります。コピーで結構ですので持参しましょう。
上記資料の提出があれば、初回の相談で大まかな方向性が見えてくる確率が高まります。このほかにも提出を求められる資料はあるかと思いますが、最初はこれだけあれば十分です。
信用金庫への相談は臆することなくお気軽に
最後にもう一度申し上げますが、
信用金庫は中小企業の健全な発展に寄与するために存在する地域金融機関です。
できうる限りの資料を持参し、真摯に相談を行えば必ず親身になって相談に乗ってくれるはずです。
誰しもはじめは金融機関の素人です。敷居は限りなく低くなっています。まずは、相談をしてみましょう。