設備資金の考え方⇒ 設備資金をわかりやすく
設備資金の定義 そもそも設備資金とは?
設備資金の「設備」とは?
企業が自ら使用する目的で保有する不動産、機械、自動車などを設備といいます。
これら設備に対する投資が設備投資、設備投資のための融資が設備資金です。
なぜ設備投資が必要なのか?
事業を継続していくには、成長・発展が必要です。
事業を成長・発展させるには、同業他社との競争に勝たなければなりません。
設備の良否は、競争力を決定づける条件です。
ですから、競争力を維持するためにはつねに設備を新設、拡張、改良し続けなければならないのです。
設備資金は必要不可欠 しかし大きなリスクもある
設備投資には大きなリスクがともなうことも事実です。
- 過大な設備投資をしてしまった
- 業績予想が不十分で、投資に見合う利益を上げることができなかった
上記のように、設備投資が原因で企業が倒産する場合があります。
このように、将来にわたる不確定要素まで織り込んで審査をする必要があるため、設備資金の融資審査は、運転資金とは異なった観点でかつ厳しいものになります。
設備資金の種類
設備資金には種類がいくつかあり、下記のように仕分けされます。
- 返済期間で仕分ける
- 設備の目的で仕分ける
以下それぞれ説明していきます。
返済期間で仕分ける
返済期間(運転資金とは異なる)
運転資金では、資金使途が違う場合それぞれ個別の融資となります。
いっぽう設備資金の場合、資金使途が違っても筆一口で借りることは可能です。
ただし、それはあくまで返済期間が同じ場合に限られます。
例えば「工場新築と機械購入で、まとめて1千万円借りて20年で返済する」という融資が設備資金ならできます。
設備資金は、設備導入の計画に融資するものだからです。
ひとつの融資では返済期間もひとつだけ
銀行融資では、ひとつの融資は返済期間もひとつだけです。
つまり「工場新築と機械購入」の場合に「まとめて1千万円借りて、そのうち工場新築は20年返済、機械購入は5年で返済する」という内容で、ひとつの融資として借入することはできません。それぞれ個別融資になります。
設備資金の場合、返済期間は特に厳しく審査される部分なので、こうした取り扱いになっています。
※返済期間については詳細後述します。
設備の目的で仕分ける
設備の目的→ 利益を生み出すか?生み出さないか?
設備はその目的で、さらに以下のとおりに仕分けされます
- 利益を生み出す設備
- 利益を生み出さない設備
1と2は性質が全く異なるため、それぞれ個別融資となります。
利益を生み出す設備とは?
機械・車両・工場・店舗など、導入することで売上利益を生み出すものおよび売上利益を生み出すために必要な設備を指します。
公害対策・汚水処理などの環境設備や、ISO認定のための費用も、導入によって企業のイメージアップにつながるためこちらに含まれます。
利益を生み出す主な設備は下記のとおりです。
- 新規事業進出を目的とした設備:工場新築、機械購入
- 生産(販売)増強を目的とした設備:新型機械への更新、店舗改装
- 経費節減、省力化を目的とした設備:省電力化工事、手入力作業を機械化
- 公害対策、ISO費用など
利益を生み出さない設備とは?
これは、設備自体が売上利益を生み出すことはないが、企業として義務づけられている設備のことを指します。
例えば福利厚生や、労働環境を整えるための設備(たとえば保養所、社員寮)などです。
もちろん、導入によるモチベーションアップから生産・販売力増強も見込めるかも知れませんが、それはあくまで期待効果のみです。
昨今は経費節減により減少傾向にあります。
社員寮は借り上げ、厚生施設も宿泊業者との提携などアウトソーシングが進んでいます。
設備資金の返済財源⇒ どこから生み出されるのか?
返済財源は設備資金の最重要命題
返済財源とは?
銀行では返済財源のことを、返済原資あるいは償還財源と呼んでいます。償還とは債務の返済を意味します。
例えば国債の満期を「償還」と表現します。国債は国の債務、つまり償還日まで国民から貸してもらい、期限に返済(満期償還)するので償還と表現しているのです。
設備資金も同様で、長期間の債務を返済財源によって返済していくことから、銀行では特にこだわりを持って償還財源と呼んでいるのです。
※この記事では返済財源で統一します。
返済財源はキャッシュフローとも呼ばれ、現在はこちらの方が一般的です。
銀行員は設備資金の申込みがあると、何はなくともまず返済財源を計算します。
なにから?どうやって返済していくのか?
資金の貸し手である銀行は融資を検討する際にこの部分を重視します。
なぜなら、これが設備資金にとって最重要の命題だからです。
返済財源の計算式と用語のポイント
計算式
返済財源=税引き後利益+減価償却費-社外流出(配当金など)
※数値を用いた具体例など、後記:返済期間の項で説明します。
用語
税引き後利益:設備導入後の予想数値を用います。
直前決算の繰越欠損が大きく、仮に予想利益を上回っても、マイナスにはせず→0ゼロで計算します。
減価償却:法律にもとづいて正しく償却されていることが大前提になります。
過去の決算や予想数値で償却不足があれば銀行にはすぐに見抜かれてしまい、しっかり不足分は減じられてしまいますので注意が必要です。
ちなみに「税引き後利益+償却」すなわちキャッシュフローが黒字なら銀行は黒字と見なします。
例:当期500万円の赤字+償却600万円=キャッシュフロー100万円
⇒ 銀行は1百万の黒字と見なす。当期損益が赤だから即赤字とははならないから。
ですから、決算や設備計画作成のときにはしっかりと法定の償却をすべきです。
設備資金の返済財源の考え方にある2つのポイント
ポイント1 運転資金との違い
返済財源の違いから、運転資金と設備資金を表現すると以下のようになります。
- 運転資金は売上げで返済する
- 設備資金はキャッシュフローで返済する
通常の事業活動で必要な資金を必要な期間借入し、売上で返済する。これを反復するのが運転資金です。
いわば売上を当て込んだ(引当にするといいます)融資です。
いっぽう設備資金は、毎年決算での返済財源=キャッシュフローで返済します。
キャッシュフローで設備資金を返済し、そのうえで残った資金は翌年に繰り越され会社の内部に留め置かれるので、これを内部留保とも呼んでいます。
重要なのは、上記キャッシュフローはあくまで設備導入後の予想数値である点です。
ですから設備資金では、資金計画や利益計画が審査の重要なポイントになるのです。
ポイント2 返済財源の中身の違い
上記のとおり、利益を生み出す設備の返済財源は、導入後に見込まれる予想利益です。
その返済期間=償還年数は償還力で算定します。(詳細後述)
利益を生み出さない設備の場合、文字通りその設備は利益を生み出さないので返済財源は現実の利益になります。
その返済期間=償還年数は、直前の決算や試算表など現実の業績から検討します。
設備資金の返済期間⇒ 大きなルールがひとつ
ルール:返済期間は償還年数以内が大原則
設備資金の返済期間を決める要素
設備資金融資を受けて、毎月いくらずつ返済し、何年で返済を終わらせるのか?
設備資金融資を申し込む際に、当然考えていかなければならないことです。
しかし設備資金の場合、この返済期間にはひとつの大きなルールが存在します。
それは「返済期間は償還年数以内が原則」というものです。
償還年数とは?
設備資金はキャッシュフローで返済する、と上述しました。銀行では設備資金を審査するときに、その返済期間を検討するために以下の計算式を用います。
償還年数=要利益償還債務÷返済財源(税引き後利益+減価償却費-社外流出)
「要利益償還債務」とは返済中の長期借入金や、過去の設備に関する未払金と、今回の設備資金の合計です。
分子は要利益償還債務、つまり過去の長期借入と設備関連の全ての債務になります。
分母は返済財源=キャッシュフローです。(上述)
設備資金融資1千万円を例にすると、
①要利益償還債務
返済中の長期借入3千万円+設備関連未払1千万円+今回融資1千万円
=計5千万円
②返済財源
税引き後利益5百万円+減価償却費5百万円-社外流出(税金)5百万円
=計5百万円
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
<償還年数>
①要利益償還債務:5千万円 =償還年数10年
②返済財源 :5百万円
つまり、上記1千万円の設備資金融資では償還年数10年となります。
償還年数と返済期間の関係が設備資金審査の重要ポイント
設備資金審査では、銀行は返済期間が償還年数以内か?をチェックします。
上記例なら、
返済期間の希望が10年なら可。
5年は短い(無理しすぎ)。
15年なら長すぎると考えるのです。
もちろん、全ての融資がこの条件をクリアーできるわけではありません。
設備資金の融資審査は、様々な側面を見て行われるものです。
しかしながら、
銀行の審査では、この返済期間が償還年数以内か?が非常に重要な要素だ
という点はぜひ参考にして下さい。
この償還年数は、企業の返済能力を示すものとして銀行では特に「償還力」とも呼んでいます