設備資金の金利
運転資金の金利相場
運転資金同様、金利の決定権は銀行にあります。ただし、設備資金は運転資金より低い金利水準となる傾向があります。
運転資金の金利相場は1%~3%台中心ですが、企業の業績や資金使途、返済期間などによってケースバイケースです。
設備資金も同じで、金利はやはり1%~3%台。
運転資金より低めの傾向とは上記しましたが、必ずしも「運転資金よりマイナス〇〇%」などと具体的に決まっているものではなく、あくまでケースバイケースです。
設備資金の金利が低い理由
運転資金より設備資金の金利が低い理由は二つあります。
- 設備資金は企業にとって必要不可欠なものだから
- 設備資金は運転資金よりも返済期間が長いから
設備資金は企業にとって必要不可欠なものだから
設備投資は企業の発展、競争力維持には必要不可欠なものです。
ですから、銀行は柔軟な対応をすべしと監督官庁からの指示があります。
また「地域経済の発展に資する~」などと銀行のHPによくあるとおり、企業の設備投資への融資対応は、銀行に課せられた使命ともいえるのです。
総じて銀行は設備資金対応には柔軟な姿勢を持っています。
例えば今まで赤字続きで運転資金も簡単には融資できない会社、あるいは返済困難でリスケ中の会社であっても、設備資金なら融資する場合もあります。
信用保証協会も同じスタンスです。
リスケ中なら運転資金新規融資はまず不可能ですが、「設備資金なら」ということでマル保でもプロパーでも融資対応を前向きに検討してくれる訳です。
もちろん審査は厳しく、ましてや赤字やリスケ中であれば設備計画や利益予想は厳正にチェックされます。
しかし、基本的には貸す方向で審査しているので、厳しい審査というより指導に近いものがあります。
設備計画や利益予想については、見通しの甘さや考え違いなどを親切丁寧に指摘して直してくれることもあります。
上記のように、審査は厳しくとも前向きな対応という特別扱いが設備資金です。
設備資金は運転資金よりも返済期間が長いから
実態としては、返済期間が運転資金に比べて長くなるので、たとえ金利が低くても、長い期間利息がもらえます。
だから運転資金より金利が低くても問題はないのです。
審査と同様、金利も事業者保護の観点から運転資金より低めの傾向があるのです。
設備資金の返済原資
銀行は返済財源を「返済原資」とこだわりをもって呼ぶ
返済原資という言葉の重要性
設備資金の返済財源はキャッシュフローです。
銀行では返済財源のことを特にこだわって返済原資と呼んでいます。
「設備資金は企業に必要不可欠」
「銀行には設備資金融資に柔軟に対応する使命が課せられている」
と上記しました。ですから赤字やリスケ中の企業にも融資する訳でしたよね。
設備資金は特別扱いですので「つまり何から返していくのか?」が非常に重要になります。
返済の元となる資金:返済財源=という意味の返済原資という表現にこだわるのです。そこで、返済の源泉となる資金という意味の返済原資という表現にこだわるのです。
これは企業が破綻したときに、重要な意味をもってきます。
なぜなら
銀行に課せられた使命により、柔軟に融資対応した。
もちろん、銀行として返済の源泉となるカネについてはきびしく審査した。
それなのに破綻した。これは企業に問題があり、融資をした銀行に問題はない!
企業が破綻し、融資回収できなかった場合の大義名分はおおむね上記のとおりです。
ですからこうした大義名分を成り立たせるために、銀行は返済財源=返済原資に強くこだわっているのです。
返済財源の予想は保守的に!
設備資金融資の審査で重要な返済財源。融資を申込むときには計画書を作成して、
返済財源を予測して銀行に説明するのが一般的な流れです。
重要な点は、数値予想は保守的にという点です。
融資を申込むのだからといって、むやみに大きな数字・バラ色の予想をする必要はあ
りません。例えば売上はこのくらい、利益はこのくらいと自分で予想したならそれより低い数字を出した方がいいのです。保守的な姿勢はむしろ銀行に歓迎されます。
返済期間について
返済期間は償還年数以内か?がチェックポイント
設備資金の審査では返済期間と償還年数(償還力)の関係を銀行は重視します。
もちろんすべて返済期間<償還年数にならなくてはいけない、というわけではあり
ません。あくまで融資の内容によってケースバイケースです。
ただし大事なのは、融資を申込む企業がこの点を知っているか?ということです。
償還年数の意味を知らなければ、設備の計画は作れない
設備資金の計画を作るとき、
「計画で予想される返済財源は、保守的に見ても〇〇円」
「返済財源より導き出される償還年数は10年」
「今回申込む融資の返済期間も10年ですから問題ありません」
償還年数と返済財源の基本を知っているんだというアピールが重要なのです。
設備資金の審査内容
設備資金の審査内容~銀行は設備資金のここを審査する
資金使途にウソは無いか?
銀行が最も嫌うのはウソです。
設備資金において最も多いウソは資金使途=カネの使い途です。
運転資金に困って、設備資金として融資を受けたカネを使ってしまった
もともと設備投資をするつもりはなく、運転資金では貸してもらえないだろうからウソをついて融資を受けた。
意図するしないにかかわらず、実際には運転資金や赤字補填に流用されてしまうケースがあります。
繰り返しますが、ウソはいけません。資金使途の検証はしっかりおこなわれます。
設備計画の信憑性、妥当性
設備導入後の増収増益には妥当性があるか?を銀行は検証します。
例えば下請企業で、親会社から指示されたラインの増設などはそれほど問題にならないでしょう。
問題は、機械が新しくなって生産能力が2倍になるから売上げも2倍になるといったバラ色の絵ではダメということです。
ある程度楽観的だとはしても、計画には数字とその妥当性ある根拠が必要です。
そして、数値予想は保守的にするのが要点です。
設備資金の融資を受けたあと、試算表などで計画が順調に推移しているか銀行はチェックします。予想が保守的であれば、計画が思わしくない場合でも計画と現実の差は大きくならずに済むかも知れません。
また、計画を作ることが難しい場合や、銀行がどんな計画を望んでいるのか真意がつかめないときは、むしろ腹を割って相談してみることをおすすめします。
銀行員は意外と親身になって相談に乗ってくれるものです。場合によっては無料、または安価で弁理士などを紹介してくれることもあります。
また、もっとよい機械、安価な施工業者を紹介してもらえるかも知れません。
紹介するのは当然銀行の顧客なので、銀行にとっても商売につながるからです。
設備資金審査のポイント
~やらなければいけないこと、やってはいけないこと!
やらなければいけないこと
エビデンスをそろえる~無用な疑いをもたれないよう
相見積もりで業者を変えた場合は銀行に必ず伝える
見積もりは常に新しいものを銀行に渡す
業者発行の領収書は必ずもらう(振込で領収書に代える場合でも、なるべく頼んで領収書をもらうべき)
上記したように支払の証拠=エビデンスはしっかりそろえてください。
特に注意が必要なのは金額が結果的に安く済んだ場合=カネが余った場合です。このときは、銀行に素直に伝えなくてはいけません。
融資したカネが余ることをオーバーローンといいます。現実にはよくあることでオーバーローン自体は悪いことではありません。
しかし余ったからといって他に使ったら絶対ダメです!
銀行は設備資金の使い途には非常に厳しく目を光らせます。
あなたにその気は無くても、あらぬ疑いをもたれないように注意して下さい。
設備資金の使い途に不明な点があった場合、最悪のケースでは全額返済を求められることもあります。
設備は計画の推移が重要~試算表は毎月提出し業況報告を欠かさない!
設備資金は、借りるまえより借りたあとのほうが大事です。
売上、利益が計画通り推移しているか?
計画を下回っているなら原因は何か?
計画に追いつきためのリカバリー策は何をすべきか?
試算表を毎月銀行に提出し、業況報告を欠かさないようにしてください。
どんなに忙しくても現状分析、問題の把握、改善策について考えなければ、銀行に業況報告はできません。
ですから、これは銀行のためではなく、自社・自分のためになることなのです!
やってはいけないこと
絶対流用してはダメ! 絶対にダメ!
しつこいようですが、ウソは絶対にダメです!
とくに流用(他の設備や、運転資金や赤字補填など)は絶対にダメです。
全額返済ならまだマシです。
場合によっては、銀行から詐欺で訴えられる可能性もあります。
特に破綻となった場合、設備資金が特別扱いということにつけ込み、ウソの計画をでっち上げ資金を詐取したと、銀行から訴えられる恐れもあるのです。
銀行員として私は、悪質なものも、あるいは意図的ではなく結果的に破綻した企業などをいくつも見てきました。
銀行から上記のような疑いをもたれないように、領収書や支払の方法で悩んだら、そのつどかならず銀行員に相談してください。
銀行員との関係は良好かつ穏便に ただし必ず記録は取っておく!
最後にこれも悲しい現実ですが、銀行員との付き合いで注意点をお話しします。
例えば見積もりと支払先が変わった。どうしても現金でくれと泣きつかれた。
こういった場合銀行員に相談する、と上記したとおりです。
しかし銀行員が「そんなの好きにすれば?」的な発言をした場合などは、手帳でも日記でもいいので、しっかり記録に残しておくことが重要です!
銀行員にはノルマがあります。
融資したあとの面倒など、本音ではやりたくないのです。
オーバーローンも同じです。
銀行員には「担当する顧客の融資残高を増やす」というノルマがあります。
つまりオーバーローンだからといって、返済されると銀行員個人が困る場合もあるのです。これは支店の成績にも同じことがいえます。
銀行員個人や支店の都合で『余ったけど返さなくていい(返さないでくれ)』といわれた場合はしっかり記録しておくことが大事です。
もしも銀行ともめた場合などに、手帳やメモでもちゃんとした証拠になるのです。
必要書類について
公的書類と注意点
運転資金、設備資金ともに準備する公的書類は基本的に同じです。
直前になって書類が不足したり、まちがったりしないように時間に余裕を持って準備しておきましょう。
土地建物の売買や担保設定などで、登記が必要になる場合があります。
例えば親の不動産を担保にする場合などもありますので、実印や不動産の権利証などは前もって確認しておきましょう。
自分はまだしも、親が実印をなくした、そもそも実印登録していなかった。あるいは実家の権利証が見当たらないなど、よくあるケースです。
許可、認可の確認資料
工場の新築や機械の導入などでは、役所の許可や建築確認が必要になります。
また飲食業などでは保健所への申請や許可証の発行申請には時間がかかります。
通常設備資金融資では、特に許可証などはたとえ何ヶ月あとになっても、必ず銀行に写しを提出しなければなりません。
特に飲食業などで個人事業主の場合、融資を申込む本人以外(妻や子など)が許可を受けている場合では、その許可を受けた人間が保証人になることを求められることもあります。