信用金庫の事業融資 運転資金借入の審査

事業資金の融資借入含む資金調達方法を信用金庫勤務経験者の視点で比べる

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あなたがすでに経営者である、またはこれから起業しようと思っている場合、必ず直面するのは「資金調達」です。個人で借りれをする場合は車のローンか住宅ローン、または携帯電話の割賦販売くらいで、金融機関の対応も定型化しているため戸惑うことはないと思われます。しかし商売のお金、つまり「事業資金」の借入についてはよくわからず不安があるのではないでしょうか。企業を存続させる時、企業を成長させる時に必要となる資金調達は営業継続の生命線であり、経営者が判断しなければならない重要事項です。まずは相手方である金融機関がどのように事業資金を取り扱っているのか知ることから始めるのが得策です。

信用金庫内での事業資金の分類・種類

創業資金・開業資金

個人が起業する場合の資金全般を指します。後述の運転資金・設備資金が含まれており、起業および起業後約1年間に必要となる資金全てとなります。事業実績がない状態での申し込みとなりますので、迅速な回答は困難であり相応の時間がかかります。また事業計画書は必須です。近年は国の方針で新規起業者への支援メニューが各自治体から出ていますので、時間はかかるものの資金調達は比較的容易となりました。

設備資金

企業が新規設備を導入する、または既存設備の修理等にかかる資金です。工場用敷地の購入や新築などの不動産もこれに含まれます。設備資金の返済期間は導入した設備の耐用年数(償却期間)が上限となるのが一般的です。軽微な設備や既存設備の入れ替え等なら不要ですが、大型設備投資の場合は導入後の事業計画の提出が求められることが一般的です。国の働き方改革の推進により、生産性を上昇させるため設備資金については補助金等のメニューも揃っており、金融機関も前向きに捉えてくれる資金です。

運転資金

企業が営業活動を続ける中で、売上の入金よりも費用の支払いが先行する場合に必要となる資金です。また、赤字経営の際も補填資金として必要となります。事業形態により必要額の割合は大きく違いますが、簡易的には月商の2ヶ月分が目安となります。財務内容や企業の規模によらず普遍的に必要となる資金で、成長企業ほど借入額が膨らむ傾向があるなど、少なければ良いと言うわけではありません。返済期間は5年以内がほぼ上限ですが、当座貸越枠を設定し、必要に応じて随時入出金して行くのが一般的です。

事業資金の調達方法

銀行ほか金融機関からの融資

①銀行からの融資

資金調達といえば融資であり、融資といえば銀行です。あなたが資金調達を行いたいと考えた時、まず取引のある銀行へ相談にいくのは当然の選択です。すでに決算書を提出しており、融資取引済であればスムーズな対応が受けられますが、決算内容が悪い場合は謝絶される可能性もあります。また、親密な相談相手としては疑問符がつく場合もあり(担当者による)、内容が悪い場合の資金調達のハードルは高いものがあります。一方で規模が大きいためプロパー金利は低い傾向にあります。ただし担保や連帯保証人などの条件は特段ゆるいわけではなく、逆にきっちり保証・保全を求められる可能性が高いです。融資を受けた後は、決算内容に懸念なく、延滞等がなければほぼ経営に口出しをしてくることはありません。逆に優良決算であれば金利低減に応じるなど、融資条件は流動的に変化します。
融資メニューは多数取り揃えており、後述のクラウドファンディング等の窓口となれるなど、資金調達相談のハブとなれる機能を持っています。その面でも最初の相談先として適格です。

②信用金庫からの融資

信用金庫は前述の銀行とほぼ同じ機能を有していますが、金融機関として比較的小規模であることから差異が生じています。信用金庫職員は大抵あなたの地元の人間です。異動はありますが、営業地域が決まっている以上、地域外へ行くことはありません。同じ地元で生きるもの同士の同胞意識から、あなたの相談に対する親密度は銀行と比較して高いものとなります。ウェットな要素と思われるかもしれませんが、資金調達の成否が企業の命運を左右する場合、担当者の熱意の有無は死活問題となります。極めて重要な要素と考えた方が良いでしょう。一方でプロパー金利は銀行と比較して高い傾向にあり、これが経営規模が小さいことのデメリットといえます。担保・連帯保証人の条件は銀行とあまり変わりませんが、交渉次第の余地は銀行よりも残されていると考えてもいいと思います。融資メニューについては銀行との差異はほぼありません。最初の相談先としては銀行よりも信用金庫をお勧めします。

③日本政策金融公庫からの融資

日本政策金融公庫(以下公庫)は民間の金融機関の補完的役割として設立されています。特徴としてはほぼ全ての業種で利用可能であり、金利も比較的低く抑えられています。制度メニューも潤沢に取り揃えられており、設備・運転・創業資金を問わず対応可能です。金融機関の人間として最大の特徴と捉えているのは、その審査基準の低さです。金融機関で融資審査が通らない企業であっても、公庫はOKだったという話はザラにあります。現場の人間からすると(大きな声ではいえませんが)「最後の貸し手」という認識があります。相談窓口は各金融機関、地元商工会議所等です。融資実行までに金融機関プロパーよりも時間がかかると考えておきましょう。

④ノンバンク系からの融資

会社経営をしているとノンバンク系融資のFAXがきたことがあろうかと思います。ノンバンク系とはつまり金融機関以外の融資業者を指します。特徴としては、「即日融資」など実行までの時間が極めて短いこと、審査が甘いこと、そして金利が比較的高いことが挙げられます。金融の常識ですが、融資実行までに時間がかかる商品ほど低金利で、時間がかからない商品ほど高金利となるため、ノンバンク系は当然に高金利となります。簡単かつ即日融資は企業にとっては魅力であるため借入を行う企業もあろうかと思いますが、極めて大きなデメリットがあります。それはノンバンク系から融資を受けている企業に金融機関は絶対に融資をしないと言うことです。金融機関は資金調達の方法によっても経営者の能力を見ています。ノンバンク系から借入を行うと言うことは、短絡的であり、資金繰りが杜撰で計画性がなく、他の金融機関が相手にしていない、と判断します。決算書に金融機関以外からの借入金の記載があった場合、金融機関からの融資はほぼ受けられないと考えてください。

補助金・助成金で事業資金を調達する

政府は人口減や生産性の低下に対応するため、働き方改革を推進しています。そのための施策として設備刷新について補助金を出すなど、設備導入支援の体制を整えています。近年の代表的な補助金が「ものづくり・商業・サービス高度連携億進補助金」で、最大2,000万円の助成が受けられます。しかし、補助金の公募開始から受付締め切りまで2ヶ月しかなく、また内容について認定支援機関の承認がいるなどハードルは低くありません。交付申請書には事業計画が必須ですが、革新性はあるか等、精緻に内容を精査しないと採択に至りません。実際に採択された顧客はコンサルや認定支援機関の職員の全面的なバックアップを受けている場合がほとんどで、通常業務をこなしながら自力での採択はかなりハードルが高いと考えます。ちなみに2018年の採択率は約50%となっており、出せば採択されるものではありません。またコンサルは成功報酬として10%ほど抜きますので、費用もそれなりにかかります。採択後の事務処理も簡易ではなく、それなりの事務量を覚悟してください。資金調達として多額の補助金は魅力ですが、採択までのコスト、および資金入金までに相当の時間が必要となるなどを考慮して取り組む必要があります。

自己資金と家族や友人からの借金

起業する場合はある程度の自己資金があるのがベターです。自己資金があると言うだけで信用度が上がります。それだけの資金プールができる余裕と蓄財する能力があると判断するからです。また法人でよくあるのは代表取締役から法人に資金を貸し付ける場合です。もっとも簡易な資金調達ですが、法人から個人への利払いはする必要がある点に注意です。
家族や友人から借金をする場合は、起業時とそうで無いかによって違いがあります。起業時に資金提供してもらう場合は「出資金」とするか「借入金」とするかを明確にする必要があります。「出資金」とした場合は法人の所有権を一部渡すことと同義になるため、その後の経営に影響を及ぼす可能性が残ります。単純に株主となることをイメージしていただければ良いと思います。相続などで株式は散らばる可能性も高いため大変リスキーな形です。逆に「借入金」とした場合は、単に融資を受けたことと同義ですから経営に対しての影響力はほぼありません。しかし、銀行融資と同じように返済を延滞するなどした場合は差押等が行われる危険性があります。家族・友人からの借入であっても金銭消費貸借証書を取り交わすことは必須です。親密な関係性から曖昧にやり取りするのではなく、親密であるからこそ明確にしておくべきです。

個人投資家やエンジェル投資家からの出資

創業資金を金融機関に頼らず調達する手段として、個人投資家からの直接出資があります。一般的にはエンジェル投資と言われます。これは投資であるため前述の個人からの借入と違い「出資」になります。よって利息はかからず低コストでの資金調達となりますが、状況によっては配当金を支払う事もあるでしょう。メリットとしてはローコストである事、及び出資者の人脈の紹介や経営上のアドバイスが受けられるなど、コンサルティングが受けられる点は大きいと思われます。特にスタートアップ時は十分な販路が構築されていないため、顧客を紹介してもらえることは何より心強いと思われます。一方デメリットとしては、経営権の一部を出資者が持つと言うことです。創業当初は良い関係であったとしても、経営を続けるにあたり意見が相違し経営において自由な決定がなされなくなる懸念もあります。エンジェル投資は節税にも利用できるため、今後拡大していく可能性があります。マッチングサイト等もあるため、資金調達の手段として一考しておくのも悪くありません。

クラウドファンディングで事業資金の調達

クラウドファンディングは近年身近になった資金調達方法です。主にネットにて資金を募り、目標金額を設定し一定期間募集をかけるのが一般的です。クラウドファンディングには購入型、投資型等の種類がありますが、購入型が一般的と思われます。商品開発について資金提供を募り、その返礼として当該商品を渡す仕組みです。商品開発費を調達することが可能となります。メリットとしては金銭出資を受けて商品での返礼となるため返済資金の確保が不要な点と、フラウドファンディングでの募集そのものが宣伝行為となる点です。デメリットとしてはファンディング業者を通じて募集を行うため手数料が必要である点と、募集額に達しない場合はプロジェクトがご破算となる点です。確実な資金調達とはならないため、商品の宣伝と割り切った方が良い側面もあります。

まとめ

資金調達には様々な種類がありますが、2019年現在において政府が中小企業の支援に力を入れている以上、金融機関からの借入が有利であると考えます。金利も低い水準となっており、経営権を握られる事もありません。また融資取引により様々な情報提供も受けられます。その他の資金調達方法もそれぞれメリットがあり、資金調達の目的ごとに検討する価値は十分にあります。特にクラウドファンディングは自社および商品アピールには有用と思われますので、広告宣伝の一環として取り組むと良いと思われます。

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