税理士視点で事業資金の融資借入 資金繰り

事業資金や創業資金の借入時の銀行との面談のポイント・注意点を税理士が語る

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借入書類が準備できると銀行担当者との面談が必要です。ここでは面談の注意点について触れていきます。結論から言うと、銀行担当者の印象を悪くしないためのポイントを押さえ、自分の事業について何でも答えられる準備をしておきましょう。銀行担当者は基本的に借入をして欲しいという気持ちで面談に臨んでいます。面談は銀行担当者がこの人に貸して大丈夫かという確認をする場とお考え下さい。

○面談で聞かれること
質問の内容は銀行や担当者によって異なりますが、一般的に下記の事項について答えられるようにしておけば問題ありません。基本的には提出した資料についての内容について聞かれるため、手許にない資料については概略や概算値を答えましょう。

1. 略歴・事業経験
創業の場合は特に事業経験を聞かれます。創業する事業の経験があるか、過去にどのような職歴があるかといったことが話のポイントです。仕事の中身について突っ込んだ質問をされることもあります。

2. 創業の経緯
1の略歴や事業経験を踏まえ、なぜ創業したのかというストーリーが重要です。担当者はこの質問で人柄や事業への熱意・意思の強さを確認しようとします。話の内容としては事業経験や略歴が創業につながっている方が印象は良いでしょう。一念発起し、異業種で創業される場合には、その準備のためにどのような勉強・取組みをしてきたのか具体的に話すことが重要です。

3. 事業内容
どのような事業を創業するか、または、どのような事業を営んでいるかを聞かれます。取り扱っている商品やサービスの内容、お金の流れといったビジネスモデルについて話せるように準備しましょう。相手は融資には詳しいですが、事業内容については素人です。専門用語や業界の当たり前を話されても理解してもらえませんので、わかりやすい言葉や誰でも理解できる簡単な言葉に置き換えて説明する必要があります。会社や商品のパンフレットがある場合にはそれらを持参すると話が早いと思います。
また、お金の流れについては少なくとも下記事項について答えられるよう準備しましょう
① いつ取引先に売上請求をして、いつお金が回収できるか
② いつ材料や外注費の請求書が届いて、いつお金を支払うか
③ 給料日はいつか(給与締日と支給日)

4. 自社の特徴・強み
特に創業時にはその事業が軌道にのるかどうかの判断材料となります。また、新商品・新サービスの開発を進めているのであればそれがどれだけ優れたものかを説明する必要があります。銀行担当者は経営のプロではありませんので、ビジネスの良し悪しを判断するわけではありません。客観的に話の内容が他社との差別化、または、自社の強みになっているかを確認し、審査に有利な情報があれば聞き出そうとしているのです。

5. 開業場所
飲食業やコンビニといった一般顧客を相手にする事業は立地条件が非常に重要なポイントとなります。これから出店する場合には具体的な場所と賃貸条件について話せるといいでしょう。既に賃貸している場合には賃貸契約書の提出を求められます。
新規出店の店舗・土地を購入するための設備資金を申込む場合には、土地の評価額(打った場合にいくらになるか)を調査したうえで融資額が決定されるため、評価額が低い場合には融資額が希望に満たないことがあるため注意が必要です。

6. 借入金額・借入時期・返済期間
借入申込書に記載した借入金額について説明を求められます。「一応借入申込書にはその金額で書きましたが、いくらなら借りることが出来ますか?」と聞いてしまう方がいますが、それは絶対にやめてください。借入申込をするということは、必要な借入額が先にあるという前提で話が進んでいます。借入金額の決定は経営の意思ですので、数値の根拠を持ってなぜその額か答えられるようにしましょう。
借入時期は余裕を持って設定する必要があります。「いつ入金になりますか?」「なるべく早くお願いしたい」といった言葉はNGです。面談から1週間後に借入したいという要望はそもそも不可能です。入金まで1ヶ月~3ヶ月は必要という頭でいてください。
返済期間については運転資金の場合は一般的に5年、設備資金でも最長7年程の期間が上限となります。運転資金の場合でも最長10年で借りることが可能ですが、創業時や初回の取引の際には難しい交渉です。

7. 自己資金
創業時には創業資金の一定割合(3分の1等)の自己資金があることを示すと審査が早く進みます。自己資金の確認には通帳の持参を求められます。創業に向けて積立を進めてきたことが通帳から明白であれば問題ないのですが、都合合わせによくわからない多額の入金がある、銀行担当者に説明していなかったクレジットローンの返済があるといった場合には説明を求められます。
通帳確認については、個人の公共料金やアパート等の家賃引落口座の確認も求められます。支払が滞っていないか事前に確認しておきましょう。

8. 事業計画・資金繰り計画
自分で作成した計画という前提で銀行担当者は説明してきますので、すべての内容について科目ごとの根拠を聞かれても良い状況にしておきましょう。売上増大の根拠もないのに計画上だけで数値を合わせると説明が出来ず印象をとても悪くすることになります。事業計画を数値に落とし込み、目標利益を管理できない経営者の事業が長く続かないことを銀行は良く分かっています。

9. 個人の債務確認(住宅ローン、クレジットローン、自動車ローン等)
個人でローンを組んでいる場合は、その契約書と返済表の提出を求められます。ローンがあること自体が審査に影響することはありませんが、ローン残高が現在の年収に比べて多すぎるといった場合、ローンの返済が滞っている場合、自己申告がないローンが後から判明する場合には借入は難しくなります。面談の後、銀行担当者は個人の信用調査を行いますので、面談で嘘をついて黙っていると逆に印象を悪くします。なお、クレジットカードのリボ払いを利用されている場合もローンと見られますので多額の残債を抱えていないようにしましょう。

上記はすべてを聞かれるわけではありませんし、順番もばらばらです。事前に模範解答を準備する必要はありませんが、少なくとも事業主としては、自分の会社の事業を赤の他人に説明できるだけの能力は必要です。不安があるのであれば第三者とシミュレーションをした上で臨むのも良いかと考えます。
聞かれたことに対しては「簡略」かつ「正確(嘘をつかない)」に答えることが必要です。どうしてもお金を借りたいからと言って、変に媚びたり遜ったりする必要はまったくありません。また、担当者によっては突っ込んだ質問や一見関係なさそうな質問をされる方もいますが、相手とのコミュニケーションと考えあまり気にしないことです。

○面談のポイント
面談のポイントとして最低限守らなければならない事項は下記の点です。

1. 時間厳守
面談の約束時間に余裕を持って到着するように心がけましょう。具体的には10分前には必ず現地に到着し、5分前を目安に受付に声をかけると良いでしょう。

2. 提出資料を忘れない
特に初回の場合は、当日に持参すべき資料の数は膨大です。資料の意味が分からないのであれば、経理担当者や同業者、顧問税理士等に聞いて漏れなく用意しましょう。どうしても当日に用意できない資料がある場合は、その旨を伝えていつまでに用意できるかを明確にしましょう。資料が揃わないと借入審査に進まないため重要なポイントです。

3. 服装
人は見た目で判断されます。特に初回面談の印象は重要で、面談の場にだらしない身なりや無精ひげを生やして来られると銀行担当者の印象は悪くなります。服装のことまで面談時の報告に書かれるかはわかりませんが、真面目な話をする場にそぐわない服装では面談の報告に良い影響は与えません。できればスーツ、最低でもビジネスカジュアルで臨みましょう。

4. 同伴者
同伴者については連れていなかない方が良いという書籍やサイトが目立ちます。実際には、親族や経理担当者、コンサルタント等は同伴しない方が望ましいでしょうが、資金繰りに詳しい顧問税理士であればお願いして同伴してもらった方が良いでしょう。
資金繰りについては顧問税理士と二人三脚で行っていて、毎月試算表の報告を受けている関係であれば、当日の面談の際にも相手の手をいれてもらえます。また、準備資料についてもどのようなものがあれば良いかのアドバイスをもらえます。面談はすべて自分で応えることになるのは変わりませんが、サポート役として心強いでしょう。
なお、税理士によっては金融機関の支店長や銀行担当者と面識がある場合があります。そのような場合には面談も和やかに進むでしょう。

5. 言葉遣い
言葉遣いは丁寧語であれば十分です。相手を下に見たり、卑下したりするのはやめましょう。

いずれも当たり前のことばかりですが、普段の仕事で出来ていない方は要注意です。普段の言動は面談の場にも出ますので、十分に準備して臨みましょう。

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