税理士視点で事業資金の融資借入 資金繰り

借り換えやローン一本化など条件変更のポイント/利息圧縮やリスケも

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借入の条件変更は、返済期間の延長やローン一本化、支払利息負担の圧縮など様々なものがありますが、一つだけ覚えて頂きたいのはどのような条件変更でもこちらから申し出る場合には借入先の心証を悪くするということです。条件変更は必ずできるものと思わず、慎重に検討しましょう。

○条件変更の種類
一般的には借入の条件変更=リスケですが、ここでは新規借入やローン一本化、利息交渉も含めて借入の条件変更と定義し解説していきます。

1. 借り換えのポイント
借り換えは新規借入のお金で既存借入を一括返済する方法です。借り換えの効果は返済する既存借入との差額が手元資金となること、また、利率を下げることに拠る支払利息負担の抑制が挙げられます。例えば、当初1,000万円を借入しており、返済期間が半分経過した際に改めて1,000万を借りると、
1,000万《新規》-(1,000万《既存》-500万《返済分》)=500万
が手元資金として残ります。返済期間も当初借入と同様であれば月々の返済額も同様ですので資金繰りも安定するでしょう。
借り換え交渉については、同じ借入先で行うことが前提です。他行間については、借り換え資金を銀行から借りることが資金使途上行えませんので、借り換えではなく新規借入の申込を行い、余裕資金で既存借入を返済することとなります。
借り換え交渉のタイミングとしては、手元資金が必要な場合で、既存借入の返済期間が半分以上経過していることが望ましいでしょう。少なくとも1年程度の返済実績では難しいと考えられます。借り換え交渉は多額の赤字や不良債権がなく、売上が極端に減少していなければ難しい交渉ではありません。
なお、保証協会の保証が付いた借入については「借換保証制度」という制度により、中小企業の借り換え要望に銀行や保証協会が積極的に応えるような要請があります。保証協会の保証が付いていない場合でも銀行担当者と日頃からコミュニケーションが取れていれば円滑に話が進むでしょう。

2. ローン一本化のポイント
ローン一本化は同じ銀行からの複数借入を一本の借入にまとめる方法です。ローン一本化の効果は返済期間を延ばすことによる資金繰りの改善、また、利率を下げることによる支払利息負担の抑制が挙げられます。例えば、残額が1,000万、2,000万、3,000万の3本の借入(それぞれ返済期間5年)があるものを1本で6,000万の借入(返済期間10年)にすると、借入残額が変わりませんが、月々の返済は半分になります。
当初     :6,000万÷ 5年÷12ヶ月=100万/月
ローン一本化後:6,000万÷10年÷12ヶ月= 50万/月
ローン一本化の交渉についても同じ借入先で行うことが前提です。
ローン一本化を利用するのに適したタイミングとしては、手元資金(運転資金)には多少余裕があるが、将来の資金繰りを考えると月々の返済負担が重い場合です。また、ローン一本化が行えるのは原則として同じ銀行からの借入が複数(2本以上)ある場合に限られます。ローン一本化の効果は前述した通り、借入期間を長く設定すること、利率を下げることですので、どちらも難しい場合には有効な方法とは言えません。
一般的に運転資金の場合には10年の返済期間が最長であるため、既存借入が10年である場合には効果は期待できません。また、金利上昇局面においては支払利息負担が増えることになります。
いずれにしてもローン一本化は一度使ったら当分利用できない最後の手段と考え、他の方法で同じ効果が期待できないか検討しましょう。

3. 利息負担圧縮のポイント
借入時の利率は最も気になるポイントの一つです。現在のようにマイナス金利下においては、銀行からの借入利率も減少傾向にあるため、既存借入の利率が新規に借入した場合と比較し高いのか低いのかは常に確認することが必要です。
利率は年率で設定されているため、その負担割合が借入時にはわかりにくいため、返済期間トータルでの負担を考えて利率減少効果を見てみましょう。

総支払利息と書いた部分は、返済期間トータルでの利息負担です。利率が0.2%下がるだけで約15万の利息負担が圧縮されます。現状の運転資金借入利率からすると既存借入利率が2%以上の借入は利率を下げられる余地があるでしょう。また、右表では返済期間別の総支払利息を記載しています。月々のキャッシュフローを優先するか、利息負担を圧縮するかは重要な経営判断と言えるため、中長期的な視野での判断が必要です。
なお、保証料の負担がある借入については総支払利息+保証料が総負担となります。保証料は借入時の入金額から差し引かれることが一般的です。日本政策金融公庫の借入や銀行からのプロパー融資の場合には保証料負担がないため、借入先に応じてトータルでの利息負担を考えましょう。
利息負担を圧縮できるタイミングは、現在のような利率減少局面や、利率が有利な災害特別融資・都道府県等の制度融資がある場合です。既存借入の利率だけを下げるような交渉は基本的には行えないため、上記1、2の借り換えやローン一本化時に検討しましょう。親切な銀行員は借り換え提案で利率が下がることを教えてくれますが、基本的には高い利率のまま借り続けてほしいという心情が働くため積極的には情報提供してくれません。同業者や他行、顧問税理士の情報から既存借入の利率の高低を確認し、借り換え等で利息負担を圧縮しましょう。

4. 既存借入の条件変更(リスケ)
既存借入の返済条件(一般的には月々の返済額の減少)を変更することは一般的にリスケ(リスケジュールの略)と言われます。リスケを行うと新規借入を行うことができなくなるため、資金繰り改善の手段としては最終手段と言えます。リスケを要請することは難しくありませんが、事業を継続する上でリスケを行うことのデメリットが大きすぎるのです。
リスケを行う際の銀行への説明ポイントは下記の3つです。
① 返済が難しい理由
リスケを受けるためには、事業主が生活を行う最低限の報酬・給与の設定で、冗費を圧縮しても現在の返済を続けていくことが難しいことを示す必要があります。
② リスケ後の返済可能額
上記①の前提で、最低限の生活をするための個人の支払(食費、家賃や住宅ローン等)を行うために返済額を具体的にいくらに下げてもらうかを伝えることが必要です。報酬・給与が高めに設定されている倍、冗費の節約が見込める場合、個人の生活水準が高すぎる場合等にはリスケに応じてくれない場合もあります。
③ 返済の意思が有ること
リスケを受けますが、完済する意思があることをきちんと伝えることが必要です。銀行に対して誠意ある姿勢で臨みましょう。
何度も言いますが、リスケを行っている間は新規の借入が行えず、法人・個人ともに信用に傷がつくこととなります。事業の継続や成長を望むのであれば、まずは1,2,3の方法、または他の資金繰り改善手法を検討しましょう。

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