出費・支出を最小限に抑える
資金繰りを立てていたら、顔色が真っ青になり緊急で資金調達をしなければならなくなった…。こうしたシーンはある日突然やって来るものですが、経営基盤が小さい中小・零細企業や個人事業主といった小規模事業者にとってみれば、毎月のように起こる出来事です。
こうしたことは経済環境が大きく変革しようとしている昨今では、ある意味致し方ないというのが現実であると受け止めなければなりません。
こうした非常時に、経営者としては一体何をして良いか悩むところだと思います。
資金繰り表を凝視する時間が増えたり、資金調達の手配を進めたり、運転資金の融資のための借入の準備を始めるなど、本業の方がおろそかになるくら い、まさに金策に奔走しがちですが、資金繰りがショートしそうになったとしたら最初に行うことは、どんな小さな出費でも支出を最小限に抑えることです。つ まり、遅らせることができる支払いや延期できる支出が何かをリストアップし、その手配を淡々と行うことを最優先にしなければなりません。
特に経営や資金繰りについて未経験の自営業者や経営者の人にとってみると、支払いを遅らせるということは不本意に加え、緊張したり気持ちが暗たんと したりするかもしれませんが、復旧は外傷の応急処理に似ているのです。ケガをして出血していたら、最初に行うことは輸血ではなく止血なのです。多くの経営 者はこの手順を明らかに間違えてしまうので借金依存の経営体質になってしまいます。支出を徹底的に抑えましょう。
金融機関に連絡を入れる
資金繰りがショートし、支出を最大限に抑え、自助努力を最大限に行ったとしても資金調達が必要になったとしたら金融機関への連絡が必要になります。
これは、借入や資金調達をして運転資金の融資依頼を決定した時はもちろんのこと、もし既に借入金があり、追加融資を行って資金調達をする場合であっても同様に連絡が必要になります。
また、最悪のパターンとして、既存の運転資金の融資の返済が滞ってしまいそうな場合でも、金融機関への連絡は必要になります。
資金繰りや借入金返済が滞ってしまうパターンの経営者は、この連絡というものが後手に回ってしまう傾向にあります。特に借入金の返済が滞ってしまう と貸出先の金融機関への連絡はしづらい気持ちは分かりますが、結論から言うといずれにしても金融機関へは連絡をいつかはしなければならないので早めに対応 した方が良いといえるでしょう。
連絡の際に行うことは、交渉の機会を作ってもらうということです。借入金の返済を一時的に止めることや運転資金の融資、さらなる資金調達などの要請など現在の経営状況や今後の資金繰りなどを加味して、金融機関へ様々な応援要請をする必要があるからです。
この時、手ぶらで交渉や相談に向かうというのはマナー違反です。しっかりとした資金繰りを書面で表し、それをもとに「現在の資金難は一時的なもので す」ということを説明し、先方と交渉することが必要不可欠になります。そして、あくまでも交渉は毅然と行える準備が必要になります。
資金繰りを見直す
運転資金の融資や資金調達をする際には、現在までの資金繰りをしっかりと見直す必要があります。自社や経営者の人に否がなかったとしても、資金繰り がうまくいっていないということは、少なくとも事実であることに変わりはありません。文句の一つでも言いたくなる気持ちがあるかもしれませんが、そこは経 営者の自己責任です。冷静にそして客観的に現状をしっかりと把握し直す必要があります。
資金繰りを見直す点で注意したいのは、特に支出の部分です。売上に相当する収入の部分が落ち込むというのはコントロールできない要素がとても強いの ですが、支出の部分は自社でコントロールすることができる範囲がとても多いので、この支出面のコントロールから見直してみましょう。
支出面を見直してみると意外と見落としていた「無駄遣い」を見つけることができます。
例えば、原材料や固定費をもっと削減できたものを見込み違いしていたということはよくあるものです。過剰な経費は徹底的に削らなければなりません が、こうした厳密な見直しは資金繰りがショートするくらいのショック療法がなければできないものです。今までの資金繰りの甘さがどれだけのものであったか がよく理解できます。これを機会に資金繰りを見直す作業をして前向きな経営姿勢に立て直しましょう。
そして資金繰りを精査した結果、資金調達や新たな借入を起こす必要があるのでしたらその準備段階に入らなければなりません。その判断基準をする上でも、資金繰りは厳密に見直す必要があります。
売掛金のチェックをする
金融機関へ借入を申し込む際に、わざわざ資金調達を金融機関へ依頼しなくても良い場合があります。特に資金繰りなどの経理仕事がおろそかになりがち な個人事業主や小規模事業者、そして中小・零細企業の数字仕事が苦手な経営者にとっては、この運転資金の融資を検討する前にすべきことがあることを知って おくべきです。
そもそも借入を申し込むということは、お金が足りないという状態でありますが、見過ごしている売上はないでしょうか。そこでお金を借りる前に、既に 売っている商品の売掛金で未回収のものがないかをチェックしてみましょう。未回収の売掛金もなく、それでも資金調達が必要でしたら借入に踏み切りましょ う。
また、なるべくなら借入などではなく、自己資金でカバーできないかを検討してみましょう。
借金は所詮「借金」なのです。借金には利息というものがついてしまい、借りた時よりも多くのお金を返さなければなりません。つまり、通常の営業努力 以上の仕事の成果を出さなければ、借金をカバーするということができないわけです。そうした意味でも今一度、売掛金の確認は必要な作業になります。
同様に、未回収の売掛金以外にも現在販売している商品やサービスの価格が、安すぎないかをチェックしてみましょう。周囲の事業者やライバル店、業界 の動向などから商品やサービスの価格というものを決めるのだと思いますが、周囲を伺いながら気分で価格を決めている経営者は少なくないのです。こうした値 下げ合戦が続くことをダンピングと言いますが、ダンピングには勝者は生まれないという鉄則があることを覚えておきましょう。
支払いのテクニック
運転資金の融資を受ける際には、資金繰りがショートしている状態であることが多いと思われます。中には様々な不遇が重なり、本来売掛金を回収できる はずができなかったために資金繰りが回らなくなってしまい、資金調達に走らなければならなくなったということは、経済的に不安定な社会になればよくあるこ とです。万が一にもそうした状態になってしまったら、支払い関係のテクニックを駆使することで新たな借入や資金調達をしなくても乗り切れる場合がありま す。
例えば、原材料を活用しているビジネスの場合、原材料の買付に関わる支払いをひと月遅らせてもらえないか相談してみることは必ず行ってみましょう。 もちろん原材料を使わないビジネスや原材料以外にも支払いを遅らせることができる取引先はないかを資金繰り表から検討してみるのは大事な方法になります。
もちろん、支払いが遅れてしまう場合、先方には十分な誠意を示す必要がありますし、良識のない企業や社会人のようにメール一本の連絡だけで済まそう というのは論外中の論外です。しっかりと状況説明を直接行って、資金繰り表なども提示して見せるという行動が、誠意そのものとなり、次へつながる信用にな るわけです。
ビジネスは、全て交渉で決まり、また決めることができるものです。交渉とは相手をねじ伏せ、自分の要望を鵜呑みにさせるということが目的ではありま せん。双方の妥協点がどこになるのかを見出すのが交渉になるので、資金繰り難の際には、相談という名の交渉をして乗り切りましょう。
復旧計画を立てる
前向きな資金調達、例えば設備投資のための借入を起こすということでしたら事業は順調に拡大方向へ向かっているということなります。一方、運転資金 の融資となると同じ資金調達、同じ借入金額でも要素が全く異なり、どちらかと言うと資金繰りがピンチである印象があります。もちろん、事業拡大のための運 転資金の融資依頼というものもありますが、その場合業種や職種によって大きく異なります。
もし、経営状態が円滑ではなく資金繰りがうまくいっていない状態で運転資金の融資を依頼するのでしたら、復旧計画を立てなければなりません。
復旧計画というと難しく考えてしまう経営者がいます。実際、資金繰りが悪化した際の「つなぎ運転資金」を申し込む経営者が多いからです。
経営における復旧とは、黒字にすること一点のみです。事業が黒字になるということは、ひと月の収入が支出より多いということです。1円でも多ければそれは黒字になるのです。
新たな資金調達を依頼する経営者は、黒字に出せない状態が続いているために借入を申し込む人が圧倒的に多いのです。
黒字にする方法は、様々なものがあります。事業環境やビジネスの内容によってその方法論は異なってきますが、あくまでも事業を存続させる方法を考えるのではなく、黒字を出すにはどうすればいいかを考えなければなりません。
これはキャッシュフロー経営という手法ですが、お金の流れをコントロールできれば、自然と黒字化し、会社存続は自動的に可能となるのです。